The Zoids Bible: Zi History File
Transcript (Part 4)


Contents: 029 ||| 030 | 031 | 032 | 033 ||| 034 | 035


 
中央大陸戦争勃発


〈2人の王子〉
〈ZAC1978~2028年〉

〈ゼネバスの追放と建国〉

■ ヘリックⅡ世、初代大統領就任
 歴史とは離合集散の繰り返しである。中央大陸に於いて、敵対していた民族は、ヘリックの元にひとつにまとまり、平和な時代が訪れた。
 国王となり、大陸全土を治めたヘリック王は、平和を貴ぶ風族の貴族、ジェナス家の娘を姫として迎え、第一王子ヘリックⅡ世を設けた。またその後、ヘリック王は、かつての大敵ガイロスの妹を第二の姫として迎え、第二王子を設け、ゼネバスと名付けた。
 平和、調和、統一を重んじ、優れた統治能力をもつジェナス家の血を引く第一王子ヘリックⅡ世。そして困難な時局を勇気と力で打開してゆく勇猛な戦士ガイロスの血を引く第二王子ゼネバス。
 王ヘリックは、この二人に「知性ある統一」と、「勇気ある平和の庇護」という両輪となって、共和国の維持、運営にあたって欲しいと願ったのである。それは、長く続いた戦乱の時代を生き、真に平和と安定を求めるヘリックの偽らざる願いであった。
 彼のこの願いは、2人の若い王子に受け継がれた、かに思えたが……。

■ ゼネバス帝国と大国戦争の始まり
 激動の時代を生き、大陸をひとつにまとめる、という偉業を成し遂げたヘリック王は78歳で他界した。本来の王位継承者である第一王子、ヘリックⅡ世は、王位を継がず、王位を空位にしたまま大統領となる事を望み、弟ゼネバスを共和国軍最高司令官に任命し、これを最高議会も認めた。
 ヘリックⅡ世は父の遺志を継ぎ、兄弟で分権し、共和国の治政にあたろうと考えたのだ。しかし、この意志は弟ゼネバスには伝わらなかった。共和国内に平和が続く限り、軍部の最高司令官であるゼネバスには退屈と不満がつのるばかりであった。強力な軍隊は、存在するだけで紛争や戦争の抑止になるという事が、若いゼネバスには理解できなかったのだ。ゼネバスは大規模な軍事演習を幾度も行い兵士を鍛え、よく統率したが、このゼネバスのいらだちは、次第に軍の重臣や兵士たちにまで広がっていった。父である戦士、ガイロスの血がゼネバスの中で騒ぎ出したのだ。
 そして、兄弟にとって、さらに共和国民にとって不幸で最悪の時がきた。
 ゼネバスが議会と大統領の許可を得ずに、勝手に大陸の外へと軍の侵攻を謀ろうとしたのだ。幸いにも、この事は事前にもれ、大統領親衛隊によって阻止された。しかしこの事件が兄弟の対立を決定的にした。
 ヘリックⅡ世に、ゼネバスは言った。「軍人に戦うな!と言うのは、鳥に飛ぶな!と言うのに等しい!兄はそれでも司政者か!」血気にはやるゼネバスを止められる者はいなかった。彼の親衛隊を中心とするエリート軍人とその部下たちは、若く力強い司令官ゼネバスに従った。彼らは大陸統一記念日のパレード最中に決起し、大陸西部に侵攻。旧部族間戦争時の城跡にたてこもり、次々と周辺領域を制圧していった。この事実により、議会はゼネバスの共和国軍最高司令官からの解任と国外追放を議決するのである。
 西側領内には、かつてのガイロスの家臣や、地底族ゆかりの民たちが少なくない。ゼネバスの向こう見ずな行動は、期せずしてそんな人々に支持される結果となった。その中のひとり、父ガイロスの重臣であり常日頃から共和制に反感を感じていた策略家がゼネバスに進言した。「ガイロスの子よ!共和制に決別し、再び戦士が戦士として生きられる、栄光と名誉の国を建国されるがよかろう。我々も命を惜しまず従い申し上げる」
 こうしてゼネバスは短期間で大陸西側の1/2を制圧し、《ゼネバス帝国》を名乗り共和国からの独立を宣言した。
 ここにヘリック共和国の理想であった平和と平等は崩れ去り、再び戦乱の時代の到来を見るのである。

〈ヘリックⅡ世〉
〈ゼネバス〉




 
地球人来訪


〈グローバリーⅢ世号の不時着〉
〈ZAC2029年〉

〈宇宙船からの脱出〉

■ 地球からの移民船
 太陽系内全域に生活圏を広げた人類は、他の恒星、さらには銀河系の対象領域へもプローブ(偵察艇)を送り、人類の未来の可能性を探っていた。太陽系内に統一政府が誕生し、人類の未来への投資として、未知の宇宙を探査する目的をもった《深宇宙開拓財団》が設立され、大規模な深宇宙探査計画が実行された。高度な宇宙船を使っても加速に18年、安定航行に220年、減速に12年かかるという壮大な旅である。
 目的地に近づき減速が終了し、冷凍冬眠中の200名の乗員たちが目覚める時がやって来た。人体の冷凍冬眠技術は20世紀に開発されていたが、解凍時に細胞の結晶化を防ぐ技術は21世紀になってようやく開発されたテクノロジーだ。
 彼らが220年ぶりに船内の無菌酸素を吸った時、航行コンピュータが、航路上に1つの恒星系をサーチした。センサリングシステムが神業とも思える精度で、そのうちのひとつ、第2惑星を画像化し、メインスクリーンに結像した。乗員200名の中の一人がつぶやいた。「……地球だ!」そう、その星の色、姿はまるで地球にうりふたつであった。クルーに歓声があがった!
 だが彼らは、彼らを待ち受ける、数奇な運命をまだ知らなかった……。

■ グローバリーⅢ世号
 宇宙移民計画の第一弾は、グローバリーⅠ世号計画で、無人の巨大深宇宙船が建造され、核融合パルス推進で光速の15%の速度で航行し、銀河系中心を探査するものだった。最終的には反物質対消滅推進による有人探査船、グローバリーⅢ世号が銀河の対称領域を目指して出発した。グローバリーⅠ世号出発から30年後の事であったが、科学の進歩は加速度的であり、Ⅲ世号は先に出発したⅠ、Ⅱ世号を遥かに超える加速度でこの2つの宇宙船を追い抜き、Ⅰ世号が銀河中心領域に達する遥か以前に、目的の銀河対称領域へとたどり着いた。

■ 反乱と不時着
 人類にとって、銀河対称領域は長い間、未知の領域だった。3つの小さな衛星を持ち、青い海が広がる第2惑星は、確かに、母なる地球によく似た星だった。乗員たちはこの星の探査を実行し、可能であれば人類の新しい拠点とすべくこの惑星に接近したが、航行コンピュータは、これに異論を唱え、さらに200パーセク先の別の恒星系への探査を主張した。キャプテンを始め航路決定員らは話し合いの結果、コンピュータの意見を尊重した。しかし、これに反発する者たちがいた。かつて、太陽系政府が設立されるとき、その指導者たちのリストから外された企業家たちの集団である。彼らはかつて、19、20、21世紀と、長きにわたり、世界を裏で牛耳ってきた超巨大企業家の集団で、前時代の亡霊とか、冒険商人等と、揶揄されてきた者たちだ。彼らは宇宙開発すら商売にしてしまう貪欲な連中だ。彼らはいつしか別の恒星系で、自分たちの王国を造る事を夢見る、正しく、古い時代の亡霊だった。
 その青い星に、海と大気、そして生命反応があると知るや、彼らはその惑星への強行着陸を実行した。その暴動に、長旅に疲れたクルーも加勢し、彼ら60名は脱出用シャトルを奪い、母船を離れた。が、船内での銃撃戦の結果、母船であるグローバリーⅢ世号の対消滅エンジンが損傷、磁場によって制御していた反物質が放出し、致命的ダメージを受けてしまったのだ。
 船内システム統括コンピュータがエマージェンシー(緊急事態発生)を叫び続け、乗員全員の脱出を命じ始めた。航行コンピュータは、最後の力を振り絞り、制御不可能となったエンジンを宇宙に放棄、船体を大気圏突入用の樹脂バリュートで包むと、真っ赤な火の玉となって惑星に落下してゆく船の船体バランスを必死で制御し続けた。
 船体の大半が、大気圏突入時に焼失し、乗員をのせた耐熱区画だけが、かろうじて惑星へと降下した。暴動勃発時の銃撃戦で何名かの死傷者は出たものの、クルーの大半は無事に惑星の大地に降り立つ事ができた。
 しかし、船は大破し、エンジンは宇宙の彼方へ吹き飛んでしまった。もはや、彼らは母なる地球への帰還は不可能であると悟り、この惑星の大気を吸った。未知の惑星、Zi。ここを第2のふるさととして、生き延びるしか方法は無い。
 こうして、冒険商人と呼ばれる反乱者と、グローバリーⅢ世号のクルーたちは、この未知の惑星へと降り立ったのだ。彼らが最初に見たものは、何処までも続く険しい岩の尾根であり、その風景は、遥か昔、恐竜たちが闊歩していた、原始の地球のそれによく似ていた。


 
〈ヘリック共和国にもたらされたもの〉
〈ZAC2029年~〉

■ 共和国ゾイドのパワーアップ
惑星Ziのゾイドは、地球の科学技術で戦闘力が飛躍的に向上した。

〈ゴジュラス アーリーモデル〉
〈ゴジュラス プロトタイプモデル〉


■ ファーストコンタクト
 中央大陸を南北に走る中央山脈。険しく、天候も変りやすい為、滅多に人が入る事もなく、神族の領地として今でも未開の地が残る場所である。かつては、風族と地底族を…今では共和国と帝国を2分している最前戦の地でもある。
 帝国と共和国の戦いが続くある日、グランドバロス山脈のほぼ中央で両軍偵察隊の衝突があった。小さな戦いであったが、深い密林であった為、朝から夕方まで攻防が続いた。
 両軍の兵士達が、物凄い音を聞いたのは、夕日が西の空を染め始めた時だった。兵士達は戦いを忘れて、音のする空を見上げた。
 爆音は兵士の耳をつんざき、巨大な火の玉は山脈の峰にぶつかり不時着した。両軍の兵士はそれまでの攻防を忘れ、未知なる飛行物体へ走り寄った。大破したそれからは自分達と同じ姿をした生物達が傷付き降りてきた。
 両軍の兵士達は最初、警戒しながらも生物達に近づいた。だが、人間と判ると帝国、共和国へと奪い合うように捕虜にしていった。
 ヘリックとゼネバスに知らせが届くと、二人の脳裏には、かつて父が戦った暗黒大陸の事がよぎった。だが、それが間違いであることは直ぐに判明した。しかし、かつての侵略者は中央大陸に統一をもたらしたが、この来訪者達が両軍にとって、さらなる戦争の火種になろうとは誰も知る由もなかった。

■ Ziの兵器は何故ゾイドか?
 まもなくお互いの言語が通じ合うようになると、地球人は自分達の科学力を見せつけ、共和国内での待遇を徐々に改善していった。グローバリーⅢ世号のエンジニア、クローネンブルグ博士は、平和を望むヘリックⅡ世の意志に賛同し、部下たちと共に共和国防備用の兵器開発に協力を申し出た。
 まず彼らは改造ゾイドよりも、1両当たりの制作が容易で量産が容易な戦車を作った。そして同コストのゾイドと模擬戦を行った結果、ゾイドが予想外の性能を発揮し、戦車を破壊した。タイヤに比べ遥かに効率が悪いはずの歩行足がなぜ? その答えは機械生体たるゾイドコアにあった。コクピットが出す電気刺激から生物の動きを再現する制御装置のコアは、同時に莫大な電力を生み出す発電機でもある。発する巨大電力は金属の多いZi地表に対して、マグネッサー効果で反発力を生み駆動を支援するのだ。すぐにコアを搭載した戦車が作られたが、そのコアは動かなかった。コアの神経が機体を自らの身体と認識しなかった為で、正常に機能させるには、骨格、神経配置の面でゾイドの体を再現しなければならないのだ。博士はゾイドを兵器とし、進歩させる事に決めた。そして、Ziの火器が、全て火薬の燃焼ガス圧によって砲弾を飛ばす"撃ちっぱなし兵器"(誘導システムの付いていない兵器)しか無いことに気づき、コンピューター火器官制システムとリンクした光学火器の開発と、ゾイドへの搭載を進言したのだ。

■ 地球科学技術の導入
 地球人科学者クローネンブルグ博士は、共和国軍が勝利すれば大陸に平和が蘇ると信じ、優れた地球の電子技術を共和国に提供した。惑星Ziの文明において、最も遅れていたのがエレクトロニクスだったからだ。ゾイドたちがレーザー兵器や誘導ミサイルを装備するようになると、次に必要なのはコンピュータによるファイアー・コントロールシステムだ。敵を発見し、パイロットがその指でレーザーの発射ボタンを押す、その万分の一のタイムラグ(時間差)が、近代電子戦では命とりになる!かつて一機60億円した20世紀の地球の戦闘機の価格の1/3は、それに搭載されているコンピュータと電子戦用機材の値段だったほどだ。いくら強力な兵器も命中しなくては意味が無い。クローネンブルグは武器の強化もさる事ながら、共和国側ゾイドの電子化への対応を急いだ。その成果は、徐々に現れ、ビームガンを多数搭載したゴジュラスにおいては、コンピュータによる火器官制システムを導入した後、同時に数体の敵に向けて照準をロックオンし、攻撃することができるようになったのだ。
 クローネンブルグは、敵、ゼネバス帝国に取り入った冒険商人ランドバリーらが、強力な光学兵器、ならびに誘導ミサイルの開発をすすめているとの情報を得ると、共和国側ゾイドの装甲を、光学兵器ならびに誘導ミサイル対応材質へと早急に変革せねばならないと考えた。従来の"硬い"だけの装甲では、近代戦では生き残れないからだ。装甲を貫くための徹甲弾に対しては、その弾頭が噴出する高圧ジェットを二重の装甲でふせぐ《スペースドアーマー》を装備しなくてはならないし、一点に強烈なエネルギーを照射してくる光学兵器に対しては、攻撃を受けた部分が溶けてその熱を分散する《耐レーザー用融溶装甲》が必要となる。これらの特殊装甲には、従来の鉄に代わって十数種もの新素材が必要なため、それらの開発を行う軍用基本素材開発生産工場を多数造らなくてはならなかった。

〈クローネンブルグ博士〉


 
〈ゼネバス帝国にもたらされたもの〉
〈ZAC2029年~〉

■ 帝国ゾイドのパワーアップ
 帝国ゾイドも共和国同様、地球人によってパワーアップされ、攻撃力に重点が置かれた。

〈レッドホーン アーリーモデル〉
〈レッドホーン プロトタイプモデル〉


■ 帝国と地球人との接触
 一方、一足早く惑星に到着していた冒険商人ランドバリーは運良く、人目に触れる事なく帝国領地に着陸し、そのまま帝国民間人になりすまして、惑星Ziを観察していた。

■ 様々な武器提供
 帝国に取り入ったランドバリーは、好戦的なゼバネスの性格を見抜き、より強大な破壊力で敵を粉砕する数々の兵器の開発と、生産を請け負う契約を結んだ。
 目標追尾装置付きクルージングミサイルやどんな硬い装甲もぶち抜く超高速電磁砲、敵に命中しなくとも、敵の近くで自動起爆する近接信管付き砲弾、敵の真上から超硬質炭化タングステン製の弾子の雨を降らせる広範囲空中散布弾。そして高度な軍事行動を可能とするC3I(シー・キューブド・アイ)、すなわち高度な情報処理システムによる指揮、統制、通信の統括システムの設立などだ。彼は現状の帝国軍のあり方を、"鉄の鎧を着た騎士ごっこ"と冷たく批判し、大陸全土を力によって統一する気であれば、高度な近代兵器の大量生産とコンピュータシステムによる全軍の統制が不可欠との大演説を行い、ゼネバス皇帝の心をつかんでしまったのだ。
 攻撃に重点を置く帝国軍の性質を理解しているランドバリーは、ゾイドの防備よりも攻撃力の増強に力をいれた。彼はゼネバス皇帝と契約を結び、1万人規模の軍事工場の経営をまかされた。そこでつくる様々な光学兵器、磁力砲(レールガン)等の強力なハイテク火器を軍に納品し利益をあげた。まず、ゾイド本体内に強力なパワーユニットを増設し、そこから発生するエネルギーを使って、多数の光学兵器、ならびに磁力砲を稼働させるエネルギー兵器システムを考案し、それを帝国側ゾイド全てに標準装備すべく活動を開始した。これにより、従来の火薬の燃焼ガス圧で砲弾をとばすガスオペレーション方式の重火器しか装備していなかったゾイドに対し、数倍の破壊力を発揮するハイテク火砲が装着され、攻撃力は飛躍的に強化されていった。
 攻撃に力をいれる帝国に、ランドバリーはもうひとつのハイテク装備を提供した。敵、共和国軍が高度な電子探索システムを導入したことを知ると、その電子探索網の網の目をかいくぐる、ステルス性をもった外装の装備を考案した。ランドバリーは自分の工場内に対電子戦用研究室を作り、電波をはじき返すのではなく、吸収、拡散する特殊な塗料の開発をスタートさせた。これらをゾイド装甲の全面に塗り付ければ敵レーダー波を反射せず、吸収し敵レーダーサイトに補足されず、敵地深くに侵入する奇襲攻撃が可能となるのだ。もし敵に肉眼で発見された時には、すでに勝敗は決している。多数の光学兵器と誘導ミサイルの一斉射撃で敵を瞬時に撃滅する、小規模編成の電撃機動戦が可能となる!と主張した。このアイディアもゼネバス皇帝は大いに気に入った。

〈地球人 冒険商人 ランドバリー〉


 
〈戦闘、戦術の近代化〉
〈ZAC2030年頃〉

〈戦略空軍戦闘隊〉
 ・シンカー
〈機甲師団重砲隊〉
 ・ゲーター
 ・マルダー
 ・ザットン
〈機甲師団戦闘隊〉
 ・アイアンコング
 ・マーダ
〈機甲師団突撃隊〉
 ・ゲルダー
 ・モルガ
 ・レッドホーン


■ ランドバリー式戦闘マニュアル
 モルガには全身に耐レーザー装甲を装着し、敵機動部隊に突入、その編成を突き崩す役割を持たせる。対空兵装をもつレッドホーンとアイアンコングには上空から飛来する敵に対し、能動位相走査型レーダー連動の追尾ミサイルを配備。飛来する敵砲弾に対しては、作戦に参加した全機体が一斉に弾幕を張り巡らせ、地雷源は、シンカーが絨毯爆撃で一掃し、進路を確保する。
 高高度から撮影された敵の状況は、レーザー通信により、瞬時に全参加機体に配信され、敵のフォーメーションに対抗し、友軍のフォーメーションの微調整を行った。

■ 近代戦術の導入
 戦闘兵器としてのゾイドの特性は、接近戦にあり!と見抜いたランドバリーは、従来の「敵とでくわしたら、とにかく戦う」という、帝国軍のゾイドの使い方を根底から見直した。敵、共和国軍のゾイドも、地球人の技術導入により、複合材による強化装甲を身にまとい、対電子戦対応装備を整え、コンピュータ制御による光学兵器を装備してきており、とてもではないが、従来のような、運を天にまかせた戦い方では、敵をうちまかす事など不可能だと考えていた。
 ランドバリーは、まずそれぞれのゾイドの特性を特化させる事から着手し、一個師団がそれ全体で一つの生き物として機能するような、最少の犠牲で、敵機動部隊との接触を果たす事を目的としたフォーメーションを確立した。
 そして、いかに近くに敵砲弾が着弾しようとも、また戦友が負傷しようとも、このフォーメーションは絶対にくずしてはならない!と全戦士に徹底した。
 冷徹にも最前列の機体が、敵の直撃弾を受け大破しても進攻速度とコースは、絶対に変更しない!その屍を乗り越えて、追撃せよ!と、命じた。それは、まるで、ギリシャ時代に無敵を誇った"いかなる攻撃にも動じず、敵に接近し、司令官の命令で直ちに散開し、敵との接近戦に移行する"「ファランクス陣型」の再来のようであった。
 そして、この陣型の最後尾に従軍する偵察用機体だけは戦闘に参加せず、その戦いの一部始終を画像データとして記録、次なる戦いの為の戦術データとして、持ち帰った。
「商売も戦争も同じだ。儲かる為のシステムを確立した者、勝利するためのシステムを確立したものが、生き残るのだ」
 彼の思想には、美学は無い。しかし、この戦法で勝利を治めた時、ランドバリーは、軍内部において、単なる兵器開発の技術者ではなく、ゼネバスに直接意見を言えるまでの存在になっていたのだ。



 
中央大陸戦争時代


〈アルダンヌ会戦〉
〈ZAC2032年〉

■ アルダンヌ会戦
 惑星Ziに地球人がやって来て以来、共和国、帝国、相方の兵器の近代化、ハイテク化が急速に進んだ。かつて野獣だったゾイドたちは科学兵器で武装し、その操縦もコンピュータナイズされ、完全な戦闘メカへと変貌していった。
 勇気と直感がモノを言ったかつての戦いから、情報と指揮系統の統一がモノを言う電子戦の時代へと転換してゆく。その事を兵士たちが実感したのが「アルダンヌ会戦」だった。
 2032年10月、帝国側の重武装ゾイド分隊が、嵐の夜をついて中央山脈の渓谷を突破し、東側への奇襲を敢行した。この動きを察知した共和国側、第2師団突撃大隊のバラン大尉は十数体のゾイドを引き連れ、渓谷で敵の侵攻を待ち伏せした。
 しかし、この戦いは、長い間ゾイドパイロットとしての経験をもつバラン大尉にとっても初めての体験となった。
 まず、帝国側が、電子戦用マーダによる妨害電波の放出で口火を切った。共和国側はこの妨害電波によって通信機能を混乱され、帝国側の動きをつかめずにいた。
 夜間、嵐、という状況下にあって、こちらから電波を放出し、敵の動きを探るアクティブ探査は、逆探知される恐れがあるのでくれぐれも行うな!と地球人技術指導者から強く指示されており、バラン大尉は、残る唯一の方法、敵ゾイドの排気熱を探知するサーモセンサーの使用を部下に命じた。
 どんな機械でも、生物でも、動く事で必ず熱を発生する。この熱を感知する装置、サーモセンサーがあれば、森の中に潜む敵も発見できるはずだった。
 しかし、帝国側は、各ゾイドに強制冷却器を取り付け、エンジンやモーターの排気熱を外気温度と同じになるまで低下させるシステムを持っていた。
 敵の動向をつかめぬまま、いきなり会敵した共和国軍は総くずれとなり、危うく敵の侵攻を許すところだったが、おくれて到着した重装備ゴジュラス3体の攻勢によって帝国側を辛うじて押し戻した。
 このゾイド同士の決戦もまた、新しい兵器同士の対決だった。
 帝国側の撃ち放つ図形認識Aiを搭載した誘導ミサイルは、敵、味方の混戦のまっただなかめがけて発射しても、かならず敵に命中する。Aiが敵ゾイドと味方ゾイドの形をはっきりと記憶しているからだ。
 共和国側ゾイドに装備された、自動照点ビームは、コンピュータによって2本のエネルギービームの弾道交差点を、必ず被写体(すなわち敵ゾイド)の装甲上の一点で結ぶ!これらハイテク兵器の威力は凄まじく、ゾイドたちの腕が吹き飛び、尾がちぎれとんだ!
 2日にわたる戦いが終わると渓谷は、まるでゾイドの墓場のような光景となっていた。
 ここに、この作戦を指揮したバラン大尉の手記が残されている。
「戦いがおわると、私は恐ろしい時代の到来に立ちあってしまったのだ、という感を強くした。もはや戦いに、勇気や誇りや名誉…どころか人間の判断すら入り込む余地は残されていない。パイロットは、コンピュータ化された火器官制システムにその命を委ね、誘導ミサイルの白い航跡と、雷光よりも眩しいレーザーやビームの雨の中で、じっと戦いが終わるのを待つしかないのだ。
 ゾイドの力も、パワーアシスト、エネルギーブースト、スーパーチャージャー等の搭載により、以前とは比べものにならないほど増大した。この戦場では0.1秒の油断が命とりとなる。
 激しい戦いが終わった時、私は、私の乗る指揮用ゴルドスが動かなくなっている事に気がついた。
 コックピットから降り、ゴルドスのかたわらに佇んで見て初めて気がついた。その横腹には強烈な熱ビームが貫いた大きな穴が二つ、あいていたのだ。恐らく、ゴルドスは悲鳴もあげるひまも無かったのだろう…。私が次に乗る事になる機体は、さらに進歩したものになるに違いない。
 そして疲れきった私を待っているものは、地球人技術者たちが作った300項にも及ぶ新兵器のマニュアルだ。
 大気中におけるレーザーの散光率、実体弾用リアクティブアーマーの耐久性、光学兵器対応装甲の理論、知性地雷への対処法、ゾイドの野生本能の統制バイオリズムの数値化実習etc,etc,etc…。次なる戦いに備え、指揮官たるものは多くの新技術を学ばなくてはならないのだ。
 昔は戦いが終わったら戦友と酒を飲み、そして眠ったものだ。
 私が古いのか?いや、恐らく敵の指揮官も同じ事を思ってるにちがいない。
 唯一の希望は、地球人の言った言葉。優れた兵器があれば、戦いは早く終わるだろう… 。という言葉を信じるしか無いのだろうか。
 私は、歳をとりすぎたゆえに感傷的になっているのか?少なくとも私がゾイドのパイロットにあこがれた時代は、もう遥か過去の事なのだ…」


 
〈戦争中期の軍組織図〉
〈ZAC2030年~2034年〉

■ ヘリック共和国

共和国議会
大統領
 最高司令本部
  機動陸軍
   機甲師団

    ハイドッカー
    マンモス
    ガリウス
    ゴドス
    ゴジュラス
    エレファンタス
   特殊工作師団
    グランチュラ
    スパイカー
    ガイサック
    スネークス
   電子探査師団
    ゴルゴドス
    ゴルドス
  戦略空軍
   航空師団

    サラマンダー
    グライドラー
    ペガサロス
  海軍
   海上師団

    アクアドン
    フロレシオス


■ 強大な国力と豊富なゾイド
 総体的に大きな国力をもつ共和国に協力し、平和をとりもどすという目的のために、クローネンブルグ博士とその部下である地球人技術者たちは、優れた技術をおしみなく共和国に提供した。それらのハイテクは必ずしも軍事一辺当ではなく、いつか平和な時代が来たとき、人々のくらしにも役立つ民生技術としても使えるものも多かった。特に、各司令官間の機密命令の伝達には、コンピュータによる暗号化ソフトが役に立った。これは専用の解読ソフトが無い限り、絶対敵には分析できない通信手段である。
 また、敵の動行をさぐり、確かな情報を得る事が重要と考え、レーザー側距システム、動体センサー、パッシブ波センサー、敵動力源音紋探知システム、敵未来位置算定システムという、優れたソフトウェア無しには実現しない探知システムを導入し、それらを搭載したゾイドを開発、電子探査専用の師団を編成し、敵の攻撃に備えた。
 また、人命を尊重し、ゾイド本体が破壊された時にパイロットを脱出させる、射出装置(イジェクション・システム)をコックピットに取り付ける事等を提案した。

■ ゼネバス帝国

皇帝ゼネバス
 最高司令本部
  機動陸軍
   機甲師団

    レッドホーン
    ゲーター
    モルガ
    ゲルダー
    ザットン
    マルダー
    アイアンコング
   特殊工作師団
    マーダ
   電子探査師団
    ゲーター
  航空師団
   航空師団

    シンカー


■ 攻撃力の高いゾイドと優秀な技術者
 共和国軍とは対照的に、敵を倒す事のみに専念した帝国軍は、様々なゾイドを攻撃専用として改造し、攻撃力の向上にばかり力を注いだ。その結果ゾイドの編成も、防備、検査、工作等の複合的なものではなく、突撃、直接交戦を主眼に置いた編成となり野生ゾイドたちの持っていた本質的な様々な機能はむしろ失われていった。
 戦争が長期化するとゼネバス帝国は、さらに軍国主義、全体主義の色合いが深まり国民は全てが兵士であり、生活よりも軍事を重視する政治体勢がより強まっていた。この事は軍需産業で大儲けをたくらむ冒険商人には、実に好都合であった。皇帝は彼らの作り出す高価なハイテク兵器を、国民の納税額を引き上げてでも買い取り、ますます軍備を増強していった。その結果、戦いは激しさを増し、ゾイドの消耗も、増えて行った。


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