The Zoids Bible: Zi History File
Transcript (Part 3)


Contents: 019 | 020 | 021 | 022 | 023 ||| 024 | 025 | 026 | 027 | 028


 
2大部族戦争時代


〈風族 vs 地底族〉
〈ZAC1920年頃〉

〈豊かな東側諸国〉
〈厳しい環境の西側諸国〉


■ 惑星Zi世界地図
 当時は大陸に約30前後の《領国》が林立し、その民たちは領国に忠誠を誓っていた。
 このことは我々は運命共同体なのだ、という意識のめばえであり、同時に領国に帰属しない民たちは無法の野蛮人として扱われる、という集団意識のめばえでもあった。このころすでに幾つかの領国は、家畜ゾイドによる交易ルートの安全の確保や外敵に対しては共同で防衛に当たるといった原始的軍事同盟契約を結び、結束していった。しかし、中央山脈を挟んで軍事同盟契約が結ばれる事はなかった。中央大陸を東西に分断して走る中央山脈。この巨大な壁が、大陸の西と東との環境を分けたからだ。
 中央山脈は気候に差をつけた。惑星Ziの自転方向と同じ方向に吹く強い風、すなわち偏西風は、太洋の深層海流の温度変化を中央大陸へと持ち込む。この結果、中央山脈の西側は四季の激しい温度変化をまともに受けるのに対し、偏西風を中央山脈で遮断される東側は降雨量も安定し、一年を通じて温度差の比較的少ない温暖な気候に恵まれていたのだ。
 このため大陸の西と東とでは、双方ともほぼ同じ面積の平坦地を所有しながら、穀物の収穫や生活の安定という点に於いて、明らかな差が生じていた。西と東の交易がさかんになると、この事実は多くの人々の知るところとなる。豊かな東側とそうでない西側……。西側領国は4年に一度のサイクルで大洪水、寒波、日照りに見舞われ、飢えとかわきで人々は疲弊した。東側はこれに対し混乱を恐れ、西側からの難民の受け入れを拒み、東西領国の対立は急速に深刻化していった。この時、西側領国の人々の不満を見て取った者がいた!地底族のリーダー「ガイロス」である。彼は地底族が潜在的にもつ"地上領土への憧れ"と、西側領国民の不満をみごとに結び付け、豊かな東側領土内に、西側領国民のための植民地を提供せよ!と強く主張、西側領国の民の代弁者となり人々の心をつかんだ。そして地底族を中心に西側領国連合を結成すると、周辺諸国へも圧力をかけ、これに加盟させていった。

〈地底族のリーダー ガイロス〉

 策略家ガイロスの真の目的は、豊かな東側領土の完全支配にあった。
 彼は中央山脈の下を通り東側へと続いている地下洞窟を使い6万の大群を東側へと侵攻させ、一気に東側領土の1/2を制圧せんともくろんだ。
 この侵攻は辛くも東側がくい止めたが、この戦いを機に、西と東の軍事的対立は決定的となった。
 こうして、急激に団結しつつある西側の動きに、ただならぬ危機感を覚えた風族のリーダー「ヘリック」は、東側領国の代表達に訴えかけ、領土を共同で防衛するための共同体を組織した。これは1年を待たずに軍事同盟へと発展。ここにZiの歴史上類を見ない大規模な軍事同盟が、2つ誕生した。一方は地底族のリーダー「ガイロス」を実行指揮官とする「西側領国連合」であり、もう一方は風族のリーダー「ヘリック」を長とする「東側安全保障連合」である。
 これがいずれ巻き起こる大規模な全面戦争の前触れである事は、誰の目にも明らかであり、中立を望みたい領国も、この2つのいずれかの軍事同盟に加盟しなくては生きて残れない事態となった。
 2大部族戦争時代の幕開けである。


 
〈長期化する戦争と暗黒大陸軍の出現〉
〈ZAC1955年〉

〈風族の長 ヘリック〉

■ 中央大陸全面戦争
 中央大陸に於ける2大部族間戦争は、大陸全土を戦場と化す大規模戦争へと発展していった。大量のゾイドが投入され、武器、弾薬、それを使う戦士も含め、大量の軍事物資が消耗された。全面戦争は、可能な限りの人的、物的資源をいかに効率よくいかに多く投入できるか、で勝敗が決定する。かつての勇気と信念が勝利をもたらす、あるいは負けても名誉だけは残った、古き良き部族間紛争とは規模も性質も異なる巨大な潮流だった。
 西、東、両陣営は一歩も引かず、大陸全土で激しい戦闘が続き、戦争は完全に長期化の様相を見せ始めた。
 戦いが長引くにつれ、かつては美しい自然と交易により潤った大陸の街々は荒れ果て、人々の心はすさんでいった。
 国家を運用するための資金と資源は、全て戦争を完遂するために投入され、戦士の消耗により、徴兵される兵士の年齢は日々下がっていった。人々の生活は困窮し、恐怖と絶望が大陸全土に広がり生活物資までもが枯渇し始めた。
 平和と民たちのしあわせのための挙兵だったはずが……。風族の長であり、東側のウォー・ロード(戦争指導者)であるヘリックは大いに悩んだ。このままでは敵も味方も、築き上げて来た全てを失う! しかし今では、両陣営間には憎しみだけが増大し、もはや休戦も和解も不可能であった。
 ヘリックは戦争を終わらせるための方法を必死で模索した。ある日古い兵法書を紐解いた時だ。部族同士の二項対立を打開するには第3の脅威が必要である、との戦術論に彼はひらめきを覚えるのである。
 彼は、曾祖父の時代の冒険家が残した「北方暗黒世界冒険記」を思い出した。中央大陸の北西には北極圏へとつながる広大な永久凍土が広がっている。曾祖父の家臣でもあったその冒険家の文献によれば、そこには外界と交流をもたない未知の部族が住み、いつしか豊かな大陸への進出を夢見てると書かれていた……。

〈暗黒大陸に向かうヘリック〉

■ 中央大陸統合軍と暗黒大陸軍
 一計を案じたヘリックは、単身この暗黒大陸を目指し、鳥型ゾイドを駆り出発した。東側の指導者ヘリックの不在は極秘とされ、影武者をたててその事実は隠された。
 ヘリックが旅立ってから1年以上が経ったある日、中央大陸は未知の軍団の進攻を受けた。見た事もない軍隊は空と海から一気に大陸に上陸、何の前触れもなく攻撃をしかけて来たのだ。東西2大部族間戦争に疲れ果てていた大陸の人々は、この奇襲になすすべもなく敗退していった。この未知の軍団こそ、北の暗黒大陸からやって来た強力な攻撃隊である。
 暗黒大陸に住む恐ろしい部族……。それは大陸に住む人々にとっては、神話の中の存在でしかなかったはずだった。
 なんの前触れもない、突然の攻撃を受けた大陸の軍隊は命令、指揮系等に混乱をきたし、ただただ混乱し、敗走した!
 大陸の危機! しかしこの時、立ち上がった者がいた。ほかならぬ暴君、ガイロスだった。
 彼は東側との休戦協定を提案するとすぐさま西側軍隊を再構成し、ただちに暗黒大陸軍への反撃に転じた! ガイロス率いる反撃軍は善戦したが、その損害はあまりに大きかった。
 これを見た東側軍もこの反撃に同調した。大陸は皆で守らなくてはならない!
 戦いは一進一退を繰り返した。しかし暗黒大陸軍はさらなる増援部隊を投入し大陸軍に襲い掛かった。激しい攻防が続いたある日、ヘリックが帰還した。彼は世界の広さを人々に説いた。我々は小さな大陸に住む友人だ。力を合わせ団結し、外敵と戦わなくてはならない! ガイロスの勇気と我々の知恵を合わせれば必ず強敵に勝てる!
 ヘリックの呼びかけに大陸の全軍は統合され、迫り来る敵の第2派攻撃隊へと立ち向かった。言語の異なる様々な部族の軍隊が共同戦線を張り、暗黒大陸軍と戦った。しかし、敵は強力であり、未知の兵器は統合軍の攻撃を跳ねのけてゆく……。


 
〈X-Day 戦争の終結〉
〈ZAC1957年〉

■ ヘリックの策と勝利
 暗黒大陸軍の猛攻の中、ヘリックは兵力を温存し一大反抗作戦を立案した。その決行日、すなわちXーDayは(ゾイド暦)7月25日と決定された。彼には秘訣があったのだ。中央大陸西部高原に集結したヘリック率いる統合軍は、南下してくる敵、暗黒大陸軍の前に立ちはだかった。決戦の時が来たのだ。
 この日、7月25日は惑星Ziの北半球における夏至。中央山脈西部では一気に、気温が10度以上も上昇し、更に太陽の照射率は30%も増大する。北緯が高く、一年中太陽が地平線にわずかに顔をだすだけの永久凍土に住む彼ら、暗黒大陸軍の兵士及び生体メカたちにとっては、容赦なく照りつける太陽こそ最も恐れるものであったのだ。
 強力な紫外線に、兵士たちは視力を失い、生体メカたちは、高温のために機能を止めた………。
 完全に弱体化した暗黒大陸軍に、ヘリック率いる大陸軍は一気に襲いかかり、最初の交戦で勝敗を決した!そして、敗走する敵を、ガイロス率いる軍団が撃滅した。
 この事によって、西と東の兵士達は、東西の両者が、力を合わせると、偉大な結果がもたらされるのだ!という事を強く感じずにはいられなかった。

■ 中央大陸、初の統一
 全てはヘリックの思惑通りであった。暗黒大陸軍団の出現は、ヘリックの考えた策なのである。だれも知らないこの事実……。いやもしかすると、策略家であるガイロスだけは、その事実に気づいていたのかも知れないが、ガイロスはヘリックに告げた。お前こそ、真のリーダーにふさわしい……と。またいつの日か、この中央大陸を外部から強敵が襲うかもしれない。敵を打ち負かし、東西のいさかいをやめたこの日こそ、あらたなる始まり……大陸が一つに統合された、統合記念日となった。この日から戦火に焼かれ、荒れ果てた大陸の再建が始まった。ヘリックは東西の隔てなく全ての民族を平等に扱うという宣言を行い、大陸の富は皆で分かち合う事を表明した。大陸には平和が訪れ、ヘリックは国王として迎えられた。ヘリックは各民族の代表を集めた議会によって、国政を決める民主政治をしき、大陸を治めた。
 一方、晩年を静かに暮らしていたかにみえたガイロスは、すでにこの大陸にはおれの仕事は残っていない、そう人々に告げると、側近二人だけをつれて暗黒大陸のさらに北に位置すると言われる幻の領土を目指して旅に出た。彼はその後、結果的に後の侵略軍ガイロス帝国の建国に関与することとなる……。

■ 暗黒大陸のゾイド
 暗黒大陸軍が使用するゾイドたちは、神話のなかにだけ存在するドラゴン、ワイバーン、といった動物たちであり、それは中央大陸の人々にとっては大いなる驚きであった。

■ 暗国大陸軍の敗退
 広大な領土を所有しながらも、中央大陸とは魔の海域「トライアングルダラス」によって阻まれ、その国土の大半を岩と氷に閉ざされた《冷たい王国》、それが暗国大陸だ。
 その氷は間氷期にも溶けることはない。はるか有史以前からそこに住む彼ら、暗国大陸の住人たちは、その厳しい環境によく慣れこの極寒の地で生き抜いて来た。
 彼らは氷で造られた城に住み、他の大陸とは異なる環境で進化した生体メカを家畜化していた。「ディオハルコン」と呼ばれる特殊な物質によるエネルギーを与え、中央大陸のゾイドよりも個体あたりの戦闘能力は圧倒的なものを持っていた。
 しかし彼らはいつの日か、陽光の降り注ぐ豊かな大地を手に入れようとひそかな野心を抱いていたのだ。
 そこへ現れた大陸からやって来た冒険家をヘリックとは知らず、暗国大陸の長は期熟したり!と挙兵したのである。
 今回の戦いにはやぶれたものの、暗黒の軍団は、豊かな大陸への進攻をあきらめたわけではない。
 またいつの日か再び、暗黒の軍団がその牙をむく時が、来るかも知れない……。


 
〈戦闘機獣の誕生〉
〈ZAC1850~1950年頃〉

■ 野生ゾイド(紀元前)
 自然に生息しているゾイドをこう呼ぶ。
 人間はかつて生活手段として野生ゾイドを捕獲し、その体の必要な部分を加工、改造して使っていた。
 特にゾイドの外皮は金属質の硬い殻であるため、そのままでも人間が着用する鎧や楯としても使えたし、また技術が進歩してからはその外殻を一度溶かし、再加工して様々な生活用品として使用した。
 狩猟時代にはまだゾイドは人間にとって狩りの対象でしかなかったのだ。

 人に捕らえられ飼育される。

■ 家畜(騎獣)ゾイド(ZAC1850年頃)
 人間の文明が発達すると、人間はゾイドを生活のために使い始めた。
 餌付けを行い、飼い慣らそうと試みたのだ。ゾイドコアからゾイドを育て、人間に柔順な個体を増やし、その結果、何世代もかけてゾイドを家畜化した。
 運搬用、土木作業用、競技用、戦闘用と様々な用途にゾイドを使った。
 野生では数が限られていたある種のゾイドは、人間に便利という事でたくさん成体化され、その意味ではゾイドの生態バランスは崩れていった。

 ゾイドコアに人間の手が入り、パーツが人工化される。

■ 戦闘用ゾイド(ZAC1900年以降)
 さらに人間の文明が発達すると、ゾイドコア自体に直接外部からの命令を伝達する方法がとられるようになった。
 生体中のゾイドコアは、ゾイドの体全体に命令を伝達する中継器官でもあるため、ここに単純な電気信号を伝える事で、ゾイドを右に左にとコントロールできるのである。
 またゾイドの外殻は金属質であるため、加工し易く、その一部に車輪を取り付ける事でより速く走行できるようになるなど工夫を凝らし、ゾイドを改造していった。

■ ゾイドコアの研究と生体改造技術
 ゾイドコアは新個体発生時には胚として機能するが、ゾイドの生体内では脳からの運動命令及び自律機能をつかさどる器官として機能している。Ziの人々は、ゾイドコアからゾイドを発生させる技術は古くからもっていたが、ゾイドの体の中で、ゾイドコアがどの様な機能をしているか、という詳細に関しては解剖学の発達を待たねばならなかった。
 ゾイドコアはゾイド自体の運動機能、そして自律神経をつかさどる生体器官であり、手足を動かす命令及び、体内の化学系ホルモンバランスを司る自律神経でもある。
 したがってこのゾイドコアに、外部から直接命令を伝達する事ができれば、ゾイドの手や足の動きを自由にコントロールする事ができ、また体温の調節や筋力の増強など、生命の原理的現象までコントロールする事ができるのだ。そしてこれらの事を医学的知識の蓄積により解明した人々は、初歩的な科学力をもってゾイドのコントロールに着手した。
 このゾイドをコントロールする技術ほど、Ziに於ける文化の発展に貢献した現象はないだろう。
 しかし、自由にコントロールできるようになった事で、ゾイドは2大部族戦争には兵器として大量に投入される事となり、Ziの歴史上、最も重要な出来事、戦闘機獣の大量生産時代の幕開けを見るのである。
 文明の定義が"自然のコントロール"であるのであれば、この戦闘機獣の発生こそ文明発展の具体的実例と言えるのではないだろうか。


 
〈部族間に広がるゾイド改造技術〉
〈ZAC1950年頃〉

■ ゾイドコア加工の基本概念
 ゾイド体内のほぼ中心に位置する「ゾイドコア」に外部からアクセスし、その体の動き、体調までをコントロールするという行為は、概念としては単純である。
 2大部族戦争時代に確立された例では、外部コントローラーから微弱な電気信号をゾイドコアに送り込み、前進、右折、左折、後退など、単純な行動を入力するというものであった。
 この電気信号はちょうど中枢から送られて来る運動命令と同じ電圧であるため、ゾイドコアはこれらの信号を脳からの命令として体全体に伝えるのだ。
 また、ゾイドの体の一部に追加した人工部品にも、その命令が伝わるように加工神経組織を連結しておけば、その人工部品もまたゾイドの体の一部同様に機能するのである。

〈外部コントロール装置〉
〈コントロールケーブル〉
〈ゾイドコア〉
〈加工神経〉
〈人工部品〉


コックピット
コントロール
ゾイドコア
コントロール
神経伝達
運動機能向上
人工パーツ
外部動力
武装強化
外付武器
内蔵武器の強化


■ ゾイドに対する民族思想
 大陸に住む様々な民族は、自分たちの生活にゾイドを活用し始めた。
 最初に地底族から始まったゾイド改造技術は、他の周辺部族へと広がり、ゾイドの交通機関などへの応用も盛んになった。
 急速に広まった技術は、各部族の生活や文化により様々な方向へ変化してゆく~
 地底族は戦闘目的でゾイドのコントロール機能及び装甲の強化などを行った。
 鳥族は同じワシ型ゾイドを運搬用と戦闘用に用いた。運搬用は翼面積の増設を行い、航続距離と滞空時間を延長した。空中戦用は不必要な外装甲を取り払い、ウイングスパンを切り詰め、安定性を犠牲にしても旋回性能と機動力を優先させた。
 砂族の使うトカゲ型ゾイドはオアシス間の乾いた砂漠を旅するため、水分の蒸発を防ぐタールを全身に塗り、背中に給水タンクを増設した。
 風族はオオカミ型ゾイドを、不整地でも走破可能なように4本の脚に不整地用パットを追加した。
 ~この様にそれぞれの部族は、自分たちの生活に、様々な工夫を凝らしてゾイドを活用したのである。

〈乗り物としての多様化〉
〈バイク的乗り物〉
〈ハングライダー的乗り物〉




 
部族統一時代


〈中央大陸 初めての統一国家誕生〉
〈ZAC1957年〉

〈ヘリック共和国〉

■ 文化と産業の発達
 ヘリックにより、中央大陸は統一され平和が戻った。
 治安が保たれ、安定がもたらされると文化と産業が発達する。
 様々な部族の文化は融合し、さらに新しい文化が生まれた。人口がさらに増えると、やがて大量生産の時代がやって来た。
 優れた生活用品は、大陸全土に供給され、それを可能にするには製品を規格化し、短時間に大量に生産しなくてはならない。そのため、大規模な工場が次々と建設され、産業革命がおきた。
 そして長い戦争で荒廃した人々の生活は、次第に潤いを取り戻していったのだ。
 まだ初歩的ではあったが、これは一種の大量生産、大量消費時代の最初の一歩でもあった。そしてマスプロダクション化されてゆく産業のなかには、ゾイドも含まれていた。ゾイドもまた商品として売買される時代がやって来たのだ。
 また、この時代に商品化されたゾイドを「メカボニカ」という名称で野生ゾイドと区別して呼称することもあったが、人々のゾイドを完全に人工物として扱う事への抵抗感や、後の戦乱で野生ゾイドが激減したこともあり、ゾイドという名称はその後も残された。

■ ゾイドの管理と設備
 大陸全土が統一されると、ゾイドの生産、管理も、一段と進歩した。
 様々な民族がそれまで独自で育んで来たゾイドの発生、改造、管理技術が1つに統合され、より効率の良い、より生産性の高い管理体制が求められ《ゾイド管理局》が設立された。
 もちろん、外敵の侵入に対し備える必要もあるため、戦争用ゾイドの生産、改造も休まず続けられた。だが同時に民需産業としてもゾイドは多いに発達してゆく。
 ゾイドの複雑な動力系、機械としての駆動系等、多数の部品の可能な限りの画一化が進み、ゾイドコアは、国家の財産として厳重に管理された。
 Ziの人々は、これから先もゾイドと共に生きて行くため常にゾイドのもつ可能性を探り、発達させなくてはならないと考え、ゾイド全般にわたる管理は国営となり、生産、管理、研究が続けられていった。
 こうして様々なゾイドが人々の生活を支えるために、新しい機能を追加され、大陸全土に供給された。
 またクラッシュしたゾイドの修理、ゆるされる範囲での改造を請け負う民間企業、通称"修理屋"が大いに繁盛したのもこの時代である。

〈ゾイドの格納施設〉


 
〈恐竜型ゾイドの発見〉
〈ZAC1960年〉

〈中央山脈大渓谷〉

■ 神族が住む秘境の地
 中央山脈の麓に、他の部族が足を踏み入れた事の無い秘境が有る。有史以前、何億トンという氷河が削り取った荒々しい渓谷。直角にそそり立った岩の壁が何十Kmも続き、その谷底は太陽の届かぬ暗黒の世界で、地獄につづいていると信じられて来た。
 活火山の溶岩脈の上に位置し、真冬でも渓谷の底からは熱い水蒸気が吹き出し、硫黄の臭気が漂う苛烈な地域のため、人々はここに近づけなかった。部族間紛争が激化した時代ですらこの領域には立ち入る者が無く、長い間大陸の地図にも空白地帯としてその地形すら描き込まれる事が無かった。
 この険しい地域こそ「神族」の支配する秘境であり聖域である。少数民族である「神族」は、この人跡未踏の秘境に暮らすことでその神秘性を保ち、他部族の侵略を防いできた。だが、この地に住み続けるもっとも大きな理由は他に有った。
 すでに絶滅してしまったと思われていた恐竜型ゾイド、ゴジュラスを育て飼い馴らすためである。彼ら「神族」の住むこの渓谷の、遥か地底の溶岩だまりの高温地下洞窟には、いままで絶滅種と考えられて来た多くの恐竜型ゾイドが生息していたのである。この事実は大陸統一後、ヘリック共和国ゾイド管理局の局員がこの地を訪れ、初めて明らかになった。

■ 地底大深度の王国
 「神族」たちの住む巨大な渓谷の遥か地下溶岩だまりの近くに、かつて溶岩の通り道だった巨大な地下空洞が存在する。その環境は、平均温度90度以上、気圧は地上の20倍!硫黄と溶けた鉱石の雨が降る、まさしく、地獄そのものだ。
 しかし、そんな環境であるがこそ、好んでそこに生息する者たちがいた。太古に地上に繁栄した恐竜ゾイドたちである。この地底の、高温、高圧の環境こそ、彼らのはるか祖先の原始生命体が生まれた、原始海水に似ているのだ。従って、かれら恐竜たちは進化する事なく、当時の姿のまま生存し、今なおこの地底の楽園で暮らしているのだ。
 「神族」たちは、この地底の楽園の存在を遥か昔から知っており、この地底で捕獲した幼体からゴジュラスを成長させ飼い馴らしてきたのだ。
 この地底に暮らす恐竜型ゾイドたちは、生物学的には、実に貴重な研究対象であり、またゾイドを人々の生活に活用しようとする、ゾイド管理局の局員たちにとっても素晴らしい発見であった事は言うまでもない。
 その後これらの恐竜型ゾイドたちは、もともと持ち合わせた巨体と攻撃性を生かし、次々と戦闘用ゾイドとして改造されていったのである。

〈中央大陸の地下洞窟〉


 
〈ゾイドの巨大化〉
〈ZAC1960年頃〉

■ 機体の大型化と、ゾイドコアの肥大化
 ゾイドの発達史を顧みると、それは大きく4つの段階に分けることが出来る。まず第1段階としては、野生ゾイドを飼育し家畜化できるようになった段階、そして第2段階はより高い機動性を得る為に、人工の四肢を取り付けた、言わば「サイボーグ化」の初期の段階、そして第3段階は、ゾイドコア以外大半の部品を人工部品に置き換えてしまった「機獣化」の段階である。
 ゾイドの命そのものであるゾイドコアも、この3つの段階ごとに肥大化されていった。これは、ゾイドコアを強く、大きくするための独自の技術の発達によるもので「生命工学」が発達する以前は、ゾイドコアを溶鉱炉につける、より大きなゾイドコアだけを選択して育てるなどといった、数百年に及ぶ地道な努力の蓄積によって実行されてきた。
 そして、最終段階である第4段階においては、ロボトロニクスの発達により、より大きな動力機を内蔵し、より大きなペイロード(積載重量)を得るため、ゾイドは現状のような巨大な機獣の姿となるのである。

第1段階
野生ゾイドをコントロールできるようになる。

第2段階
人工パーツで運動機能を高める。

第3段階
体の大半が人工パーツとなる。

第4段階
戦闘機能向上のため、大型化し、武器も装着される。


〈共通コックピット〉

■ 人工部品と統一規格
 大陸統一後、人々のよりよい生活、および外敵の侵入に備えるためにも、ゾイド管理局は、さらなるゾイドの強化、普及に努めた。ゾイド管理局の管理のもと、民間人がだれでもゾイドを使えるようにするための画期的なシステムが完成する。
 「共通コックピット」の開発である。
 様々な形、大きさ、機能のゾイドに対し、それぞれの操縦システムを設計、生産していたのでは効率が悪すぎる。
 操縦システムとは、搭乗する人間とゾイドのインターフェイスである。もしそれが画一化出来れば、ゾイドの生産、およびメンテナンス作業に置いて、素晴らしい効率化が可能となる。
 こうして、考案されたのが、全ゾイド共通コックピットである。コックピットの語源をたどれば"狭い場所"。その意味通り少々狭苦しいが、このコックピットユニットを量産すれば、どのゾイドにも、同じ操縦方法で、搭乗できるのだ。従来のように、乗る機種によっては、その乗員は何ヶ月も講習を受けるという、面倒な手続きも必要無くなり、ゾイドの普及率は一気に高まった。

■ 野生の制御と増幅
 ゾイドコア以外の大半をサイバネティックス・パーツで置き換える時代がやってきた。しかしそれと同時に、運動の中枢であるゾイドコアから伝達される命令に、いかに早く敏速に反応することができるかが、人工の脚や腕に課せられた課題となった。
 ゾイドのもつ野生の生存本能、闘争本能をダイレクトで反映できてこそ、ゾイドコアを中心とした人工部品による強化システム、すなわち「機獣」としての真の存在意味があるのだ。
 より強靭で、より敏捷な機体の開発が行われそして生産性を増すために共通部品の必要性が重要視され始めた。
 もし、一体で数十万個もの部品を必要とするゾイド機体の、1/10でも共通部品とする事ができれば、これは驚くべき進歩である。
 まず着手されたのが、一種の消耗品である、各関節のサーボモーターである。必要な時に取り外す事ができ、組み立て時には瞬時に結合が可能な関節、というアイディアは、後に全ゾイド共通の関節キャップの開発によって具体化された。
 これにより、関節に内蔵されたサーボモーターは、古くなれば交換が可能となりメンテナンスの効率化にも成功したのだ。

〈関節キャップ〉


 
〈武装の進化〉
〈ZAC1850年~1960年頃〉

■ ゾイドの進化と兵器
 ゾイドを家畜化し、狩りや戦闘に使っていた時代に於いては、野生ゾイドに外付け装甲をほどこした程度であったため、もっぱらそれに乗る(うちまたがる)兵士が、自ら剣や楯を持ち敵と戦った。
 しかし、次第にゾイド自体に手を加え、四肢を人工物に取り換えるようになると、同時に進歩し始めた"武器"を搭載するようになった。
 強力な弓(ボウガン)や投石機が、ゾイドの走行機能の妨げにならぬ部分に取り付けられ、乗員が安定して搭乗できる簡易コックピットも増設された。乗員はレバーやスイッチを押してゾイドを操縦し、また同時に"武器"の操作も行った。
 さらに進歩したゾイドは、ゾイドコア以外の大半が人工部品となり、巨大化した戦闘用機獣という状態になった。
 この時点での"武器"とは、火薬の燃焼ガス圧によって、金属の弾体を高速で射出し、その運動エネルギーによって目標を破壊する、いわゆる"火器(ファイヤー・アームズ)"である。接近戦用には、命中率よりも速射に重点を置いた高速ガトリングガンが装着され、また長距離用には砲射の長いカノン砲が開発さた。
 より遠くの目標により正確に、より大きいダメージを与えるためには、大きく長い火砲が必要となる。よりたくさんの弾を積載するには、より多くのペイロード(積載量)が必要となり、これらの条件を満たすため、ゾイド機体はさらなる巨大化を遂げてゆくのだった。

〈ZAC 1850年頃〉
ゾイド本体に武装はなく、人間が武器を持ち戦う。

〈ZAC 1930年頃〉
簡単なコックピットとゾイドの体に武器が付けられる。

〈ZAC 1960年頃〉
ゾイドそのものが兵器となる。
ゾイドコアと連動した武器が開発される。



 
〈ゾイドのエネルギー〉
〈~ZAC1960年頃〉

■ 約2億年前
 Ziに於ける生命体が、まだ強固な外殻装甲を持たない原始金属生命体であった頃、その食物連鎖は単純であった。
 幼体は高温高圧の金属海水の中で育ち、同類の金属生命体を捕食し、それを自分の体の一部として再生して活動していた。まず小さな虫や植物がその生態系の最下位に存在し、それを食べた者がさらに強い者に食べられる、という食物連鎖が繰り返されていたのだ。

〈原始金属生命体〉

■ ZAC 1900年頃まで
 Ziの生物たちがゾイドコアを発達させると、そのゾイドコアを中心とした食物連鎖が成立した。ゾイドコアには、ゾイドたちの生命活動に必要な要素の全てが濃縮されている。ゾイドコアを捕食すれば、その個体は自らの成長、活動に必要な成分とエネルギーを一挙に補充できるのだ。
 これは、ゾイドコア以外の部分を捕食するより遥かに効率がよい。ゾイドコアは環境が激変した地上で生き抜くための、みごとなシステムであるが、同時に新しい食物連鎖系を作り出す元となった。

〈金属外骨格生体〉

■ ZAC 1950年頃まで
 これに比べ、ゾイドコア以外の大半の部分を人工物に置き換えられたゾイドに於いて、"生きてゆく事"はそれを修理、補強する人間なしには不可能となっている。
 生命としてのゾイドコアを生存させるには、それがエネルギーとして消費してしまう高温、高圧の原始海水の成分を、一定期間で補充してやらなければならないし、人工物である体を稼働させるには、サーボモーターを駆動させるためのバッテリー、機種によっては内燃機関を動かすためのオイル、そして各パートの可動部には潤滑油、オイルシリンダー用オイルなど、少なくとも数種類のエネルギー源が必要なのである。
 これらの絶え間無い供給は、高度で洗練された管理体制なくしては不可能であり、すなわち戦闘機獣ゾイドは、人間なしには成立、存続しえない存在である。
(ただし例外として野生化した野良ゾイドが存在する。しかし彼らもその存在を維持するためには、他のゾイドを襲い、そこからこれら数種のエネルギー源を得ている訳であり、その意味に於いては間接的に、人間の介在なしには生存できない、と言えるだろう)

〈メカ生体〉


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