The Zoids Bible: Zi History File
Transcript (Part 1)


Contents: 001 ||| 002 | 003 | 004 ||| 005 | 006 | 007 ||| 008 | 009 | 010


 
惑星Ziの生物進化


〈金属生命体の概念〉

★惑星Ziの、生物を総称して[金属生命体]とする。
★ゾイドコアが体内に存在している[金属生命体][ゾイド]とする。

 10億年前~
A 原始金属生命体

・地球の生物に似た外観で体内に重金属物質を多量に含んだ惑星Ziの原始生命。
・体の一部を硬度のある「殻」で形成されている状態。

 2億年前~
B 金属外骨格生体 (外殻生物)

・体全体が外骨格となり、体内にゾイドコアが完成進化した状態。
 =野生ゾイド
 主に動物型ゾイドのことで、自然進化したままのゾイド全般。人の手の加わっていないゾイドを野生ゾイドといい、特に動物型ゾイドが発生する前に栄えた恐竜型ゾイドを古代ゾイドという。


 ZAC1890年~
C メカ生体

・「B金属外骨格生体」を人間が生体改造した状態。
・体の大半が人工部品となっている。
・自然生殖機能は失われている。
 =人工ゾイド
 =戦闘ゾイド(戦闘機獣)
 =野良ゾイド


 2000万年前~
D 金属粘膜生体

・主に惑星Ziの原始人と植物のこと。
・ゾイドコアを持たないが、金属の分泌物で体をコートする能力がある。
 =古代ゾイド人
 =惑星Zi植物


■ ZAC2000年 惑星Ziの状況

ソイド
・野生ゾイドは主に動物型が生息。
・恐竜型はごく一部が生き残っている。
・大半のゾイドは人間の手により人工化、巨大化されている。

植物
惑星固有の植物と、グローバリーⅢ世号が持ち込んだ地球からの植物と半々になっている。

人間
・古代ゾイド人の頃の能力、特徴はなくなっている。
・地球人との混血化が進んでいる。


■ もくじ

001 惑星Ziの生物進化
002~004 惑星Zi
005~007 金属生命体
008~010 野生ゾイド
011~013 古代ゾイド人
014~018 部族間紛争時代
019~023 2大部族戦争時代
024~028 部族統一時代
029 中央大陸戦争勃発
030~033 地球人来訪
034~035 中央大陸戦争時代



 
惑星Zi


〈ビッグバンから惑星Ziの誕生〉
〈120億年~50億年前〉

■ 宇宙の始まり ビッグバン
 今から120億年前、極少量の「宇宙粒子」が大膨張を起こし、"宇宙"が生まれた。
 この宇宙生成の大爆発を「ビッグバン」と言う。この時に放出された物質は、やがてそれぞれの重力によって集まり、小さく重い"ガス雲"の集団を形成していった。
 それらは加速度的に収縮し、銀河へと成長していった。
 「ビッグバン」から約70億年後、銀河の中心(バルジ)から3万光年の銀河の腕の中、ちょうど我々の太陽系とバルジをはさんで対称の宇宙域で新しい星系が生まれようとしていた。
 互いの重力によって引き寄せられた塵とガスが円盤状の雲となって回転し、その中心はF級黄白色恒星へと成長、その周囲をまわる第1惑星として「惑星Zi」が誕生した。約50億年前の事である。

ビッグバン

ガス雲の渦
岩や氷、ちり、ガスが飛びちり、ぶつかり合いエネルギーを生む。


ゾイド星系誕生

惑星の衝突
吹き飛んだ破片は、惑星Ziの「月」となる。


惑星Zi

■ 惑星Ziの誕生
 周囲の小惑星を引力で引き寄せ、直径1万Kmまで成長した原始惑星Zi。表面温度は摂氏6000度、構成物質は全て溶け、火の玉のような状態であった。
 それから1億年後、ようやく地表が冷え始め、ごつごつとした硬い岩石で表面を覆われた惑星Ziは、安定した死の世界だった。が、誕生から2億年を経たある日、惑星Ziの直径の1/4にも及ぶ質量の大きい惑星「Mi」がZiに衝突した。
 このダメージで、あやうくZiは完全崩壊に至る寸前となった。Ziの地殻の1/4が宇宙へと吹き飛ばされ、衝突した惑星自体が、新たにZiの一部となって加わったのだ。そして宇宙へ吹き飛んだZiの外殻と、衝突した惑星の破片はZiの衛星軌道をまわりつづけ、やがて「De、Se、Ae」の3つの衛星となった。このZiに衝突した惑星の構成要素のほとんどが重金属であり、Ziに現存する重金属の 78%はこの惑星がもたらしたものと考えられる。
 この惑星の衝突エネルギーにより、Ziは再び火の玉となり、表面はどろどろに溶けた重金属で覆われ、まるで溶鉱炉のようであった。強酸性の大気とアンモニアの支配する海は地獄そのもので、生命の発生とは程遠い環境が続いた。やがて再び、地殻が固まり始めたものの、惑星衝突の際に大気中に大量の金属微粒子が放出され、それらは何万年ものあいだZiの空に滞留し続けることになる。その結果、地上から放出される熱量の大きい赤外線が遮断され、暴走温室効果を持続させ、安定期に入った後もZiの大気温度は160度、気圧は60気圧という生命の発生には適さぬ環境になってしまった。
 しかし、その熱い海の中に「好熱性」の細菌が生まれた。海底火山の猛毒の硫化水素の中で自己複製するその細菌は、海水中の重金属を巧みに化学合成し、運動エネルギーをつくりだす、というしたたかな生命力でZiの熱い海の底で次第にその数を増やしていったのだ。


 
〈ゾイド星系 第2惑星 "Zi"〉
〈50億年前〉

■ 惑星Zi、3つの衛星
 惑星「Mi」の衝突によって生まれた3つの衛星は、内側から「De、Se、Ae」と呼ばれている。
 いずれもZiとMiの破片の集合物だが、最大のAeだけが、非常に質量が大きく、同心からはずれた軌道を描いている。その構成要素は100%Miの衛星「Te」の破片と目され、このAe内深部の探索により、Ziに於ける生命誕生の謎が解き明かされる可能性がある。また、最小のDeは、Ziからの平均距離が18万Kmしかなく、その距離は日々短縮され、いずれはZiに落下する事が、計算上明らかとなっている。

ゾイド星系
惑星Zi


惑星Zi
衛星「Ae」
衛星「Se」
衛星「De」


■ ゾイド星系・第2惑星
 ゾイド星系の第1惑星として誕生した惑星Ziだが、現在はその内側にもう一つの惑星が存在し、第2惑星としてF級黄白色恒星のまわりを平均公転速度、10万1326Km/hで公転している。Ziの直径は10026Km、地軸の傾き26.3度。
 惑星誕生から2億年目に発生したと考えられている「好熱性」生命体は、その後Ziの海中全域へと広がっていった。
 かつて全てが溶けた金属の海であったZiの表面も、やがて冷え、固まり、固体としての大陸と、多量の金属を含んだ熱い海とに分かれて安定する。

暗黒大陸 (ニクス大陸)
北方大陸
中央大陸 (デルポイ大陸)
東方大陸
南方大陸
西方大陸 (エウロペ大陸)
 砂漠
 ヘスペリデス湖 (金の湖)
 オリンポス山 (天導山)
 メリクリウス湖 (銀の湖)
トライアングルダラス (魔の海域)
アンダー海
デルダロス海
フロレシオ海
アクア海


■ 惑星Zi世界地図
 現在のZiの地上的環境、及び地質学上の特徴は、今から70万年前の微惑星群の地表への落下によって決定された。これは、ゾイド星系生成の過程で取り残された、約1億個以上の微惑星群の軌道とZiの軌道が重なったため起きた現象で、最大、半径16.2Km、推定質量1兆8億トンの微惑星が8つ、Ziの赤道上に落下した。
  岩と氷のかたまりであったこれら微惑星がもたらした大量の水が蒸発。大気中に滞留していた金属粒子を全て地上へと洗い流し、2万年かけて現在の地球型大気へと改造したのだった。
 この結果、熱を帯びた金属粒子の厚い雲は消え、地表には恒星の光がとどき、海底火山の沈静化とあいまって、地表は急速に冷却された。
 1つだった大陸は微惑星のもたらした海水によって水没。標高差によって現在の6大大陸が形成された。


 
〈原始の惑星Zi、生命の起源〉
〈30億年~5億年前〉

■ 金属で形づくられる体
 惑星Ziの原始海水中に、最初の細菌が現れた痕跡は、Zi誕生から約2億年後と推測されている。
 摂氏120度以上の硫化水素と、金属を多量に含んだ海水中で「好熱性」の細菌たちが、自己増殖を開始した。恒星の光の届かぬ海底で、彼らは巧みな化学合成によりエネルギーを得、様々な形質の生物へと変化していった。
 彼らの体液は、ほぼ当時のZiの原始海水と同じ成分だが、その周囲に金属による殻を形成するものが現れその外殻生物が、やがて海底での生存競争の覇者となって生き延びたのだ。
 金属は遺伝によって子孫に伝える事はできないが、体を構成する金属を後天的に体内に取り込む生体システムは、さほど複雑ではなかった。
 彼らは周囲の環境にふんだんに存在する金属を摂取し、血球によって体全体に循環させて利用するという、惑星Zi特有の進化を開始したのだ。
 また体内に取り入れた金属元素の濃度を調節し、化学反応によって熱エネルギーを得るという生存に有利なシステムも発達させ、やがてそれは後に彼らが地上を闊歩する際の電導筋肉へと発達進化してゆく。

■ 今も生き残るゾイドカブトガニ
 外殻に、モース硬度7にも達する硬い金属外装をもつ原始金属生命体「ゾイドカブトガニ」は、水温120度、20気圧という悪条件を生き抜いて来た惑星Ziのしたたかな原始生物の子孫である。その姿、形はほとんど当時と変わらず、今も地底熔岩湖などに生息している。

〈原始金属生命体〉
まだゾイドではない


■ 殻をもった初期の葉虫
 原始海水と共に体内に取り込んだ金属を、特殊な器官によって体表に固化させるシステムは、すでに初期の原生動物である「外殻葉虫」が所有していた。そして彼らは摂氏120度以上の高温海水中で繁殖した。



 
金属生命体


〈原始金属生命体の進化〉
〈10億年~2億年前〉

〈原始生物〉
 植物
〈刺胞生物〉
 昆虫
〈脊索動物〉
 魚類
〈脊椎動物〉
 哺乳類
〈四肢動物〉
 鳥類
〈恐竜〉


■ 地球と異なった生物発生環境
 高温、高圧の海中に発生した惑星Ziの生命たちはその後、より複雑な生物へと進化していった。他者との生存競争に勝ち残るためには、より俊敏に動き、より硬く、大きく、自らを進化させる道を進むしかない。
 海底を這い回っていた動きの遅い葉虫たちは、より速く、より遠くへ移動する手段として脊髄をもつようになり、捕食のための鋭い牙と、モビリティを向上させるため、ひれを発達させた。やがて2対のひれは、彼らが未知の領域である陸に上陸するための"脚"へと発達してゆくのだ。

■ 鎧をまとった生物群
 高温、高圧の海底で発生した生命は、やがて環境に対し、3つの選択をする。
 微惑星群の落下により、大気中の不純物が取り除かれ、恒星の光が地上に届くようになった時点で、この光を使い光合成を行う原始生物が現れた。彼らは後に、美しい緑色の構造発色を持つ植物へと発展してゆく。
 一方、硬い金属質外殻を得た葉虫は昆虫に、そしてより行動的に動くために必要な脊髄を発達させた魚類のうちの一種が、そのひれを"脚"へと発達させ、陸上をめざした。
 陸上で活動するためには、より強靭な筋肉が必要となる。彼らは金属を体内、外に取り込む器官をより発展させ、よりエネルギー効率の良い半導体筋肉を完成させた。
 これは、最新のロボトロニクスが産んだ、電荷によって伸縮するイオン電導性高分子膜技術と酷似している。
 彼らはこれにより機敏な動きと硬い殻を得て、地上で繁栄してゆく事となる。

■ ゾイドコアの発生
 高温、高圧、高濃度の硫化水素という溶鉱炉の中で生まれた惑星Ziの生命は、環境が変わり、陸上で生活するようになった時点に於いても、その体液、血液の成分として、この惑星Ziの原始高温海水の成分を持ち続けている。しかし、陸上を大型の竜脚類が闊歩する時代に至っては(地中熔岩溜まりの特殊な環境を除いて)地上にはこの原始高温海水はすでに存在せず、したがって新個体発生時に、彼らは子孫を生みおとす環境を失ってしまった。これを打開し、新個体を後の世に残すために発生した画期的システムが「ゾイドコア」なのである。


 
〈ゾイドコアの発生〉
〈2億年前〉

〈原始金属生命体〉
〈金属外骨格生体〉
〈ゾイドコア〉

 この中に種としての基本生態が凝縮された。


■ 陸上生活~その後のゾイド化
 高温、高圧の海底で生まれたZiの生物にとって、次々と襲いくる環境の激変は非常に厳しい試練であった。
 これを乗り切るための手段として発達したシステムが「ゾイドコア」である。
 このシステムは地球の生物とどう違うのだろうか。
 細胞分裂して増える原生生物やウイルス以外の高等生物は、繁殖のためにみな卵を生む。人類も卵を生むが、自分の体内に生み、体内で胎児を育てるため哺乳類として分類されているのだ。
 繁殖のための手段という点では、ゾイドコアも卵であると言える。
 ただしゾイドコアは繁殖時期に発生する"新固体の元"ではなく、常にゾイド生体の中心に存在する、生命データ保存装置であるのだ。
 金属生命体として地上に上陸した彼らは、次第に有機質を体の中心にあつめ、金属濃度の高い、固く頑丈な組織でこれを護った。
 ゾイドコアに発達する以前のこの器官は、体内の化学系を司る体液循環器官であり、常に化学反応によって高温、高圧を保ちつづけ、外気温度の低下にともない体温が低下すると、その熱を放出して体温の調節も行うという、まさに生命の元であった。
 やがて定方向進化の結果として、この器官に体内の大半の臓器、器官が集約されるようになり、有機体器官がこの臓器のなかに完全にゾーニング(区画化)されるに至った。
 これによって、骨格、筋肉、外皮は金属、体の中心(正確には重心)に有機体器官がゾーニングされるというZi特有の体構造を持つ生物「ゾイド」が誕生したのだ。
 このゾイドコアによる新個体発生システムは、環境の劇的変化に対応するための手段としては非常に有効であった。
 微惑星落下後、寒冷化が進み、平均気温8~26度となった惑星Ziだが、約数万年単位で繰り返される自転軸の傾きの変化や、恒星をまわる公転軌道離心率の変化によって、平均気温−50度の氷河期と、比較的暖かい間氷期を繰り返すようになった。
 これは地球に於ける「ミランコビッチ・サイクル」(氷河期と間氷期のサイクル)に非常に似ており、もしこのゾイドコアシステムを有さない陸上生物が居たとするなら、このZiに於いて今日まで生存を続ける事は不可能だったに違いない。
 ゾイドコアは、いかに外環境が変化しても個体発生時に、かつて生命が生まれた「高温、高圧の原始海水」をその内部に再現する、命のゆりかごなのである。

■ ゾイドコア
 ゾイドコアの外観は、人類が初期に作った核分裂チェンバーに似ている。
 内部は高温高圧で、その圧力を封じ込めるために真球状となり、自ら重心移動して動くのだ。


 
〈ゾイドの生命システム〉
〈2億年前〉

ゾイドコア生命サイクル
〈成体〉
〈成体内部〉
〈成体の死亡〉
〈幼体から成体へ〉


■ 野生ゾイドの成長のしくみ
 かつて、野生ゾイドたちは胚を海中に産み落とすだけで子孫を繁栄させられた。しかし、高温、高圧の環境が失われた時点で、彼らは胚の中に高温、高圧環境を発生、維持するシステムを発達させた。
 この胚は成体の死後、水中を目指し移動し、水中に於いて水と水に含まれている金属原素を胚内に取り込み、胚内で高温、高圧環境を再生してゆく。
 発生した幼体は、金属吸収、分配器官をフル活動させ、水中の金属原素を摂取し、骨格や外皮を作り成長してゆくのだ。

■ 野生ゾイドの繁殖のしくみ
 自らを霊長類と呼び、誇る、我々地球人類の血液の成分は、驚くほど地球の原始海水の成分と似ている。両者の成分表を目の当たりにすると、ほぼ同一と言って差し支えないほどだ。
 これは我々の遥かな祖先が、原始海中の中で発生した事に由来している。
 我々は文明を持ち、いつの日か別の恒星の彼方まで旅立つ時が来る。その時でさえ、体内では遥か太古の地球の原始海水をコピーし続けるのだ。
 これが"誕生日の束縛"である。惑星Ziの全ての生物群にもこの摂理が当てはまる。
 ゾイドたちは、コアの中にかつて自分たちの遥かな祖先たちが生まれた時と同じ高温、高圧の環境を再現するタイムカプセルを持っている存在なのである。
 ゾイドコアは、地球生物で言うところの卵であり胚である。
 その中には遺伝データとして、成体が生存中に蓄積した環境に対応する経験が保存されている。
 ゾイドコアはそれぞれの種により多種、多様な形質があり、大きさも様々である。いずれも水中に於いて新個体の発生の素となり、子孫を残す。
 成体の体質や生活環境によって、1体の成体から複数のゾイドコアが残される事があり、種によってその数は決定されていない。
 ゾイドには繁殖期はなく、ゾイドコアが体外に露出する、すなわち生体の死が訪れるとゾイドコアはさっそく新固体発生の準備を始めるのだ。

〈様々なゾイドコア〉

■ 様々なゾイドコア
「ゾイドコア」は、それぞれの固体によって、その大きさ、色、形が異なる。この球体の中に惑星Ziにおける生命進化の歴史が刻まれているのだ。



 
野生ゾイド


〈恐竜型ゾイドの大繁殖〉
〈2億年~5000万年前〉

〈翼竜類〉
〈竜脚類〉
〈獣脚竜類〉
〈鳥脚類〉
〈剣竜類〉
〈角竜類〉


■ 惑星Ziを支配した生物たち
 「ゾイドコア」の発達により、いかに外環境が変化しても地上で死、再生を繰り返す術(すべ)を得た巨大竜型外殻生物たちは、約2億年前にその最盛期を迎えた。
 彼らは地表、岩石、水中に多量に、そして無尽蔵に存在する金属原素を体の内外に取り入れ、再加工するという画期的な体内器官をさらに発達させた。その結果、重力に逆らい、立ち、走る、強靭な体を所有するに至った。
 特定の外敵の存在が無く、気候の安定がつづいた事も手伝って、彼らは種を増やし、巨大化し大いに繁栄した。
 この画期的器官は「補食した生物のタンパク質は、自らの体内組織へと転化し、金属原素は骨格や外殻に転化する」という2種類の作業を同時に行う事を可能とし、その結果、地球の生態学者ロトカとボルテラが、1925年~1926年に表示した補食者と被食者のバランスを表す計算式「ロトカ・ボルテラのモデル」にあてはまる、みごとに循環する生態系を確立した。
 食われる者が減るとそれを食う者も減る。食う者が減ると食われる者が増える。するとそれを食う者が増える……という永久につづく神のつくった美しい生態系が確立した。
 これは後にゾイド人が「ゾイド」を飼育し、家畜化するようになる"人為的淘汰"が介入する日までバランスを保ちつづけた。
 野生ゾイドたちは生命の基本プログラムであるところの"可能性を求めて多様に変化し、来たるべき大変動に備えよ"という条項にしたがい、空に陸に海に地中に様々な形質に変化し増えていった。
 いくつかの絶滅種を除いて、大半の巨大竜型外殻生物は5000万年前までに数的、種類的に絶頂期を迎え、その後に進化発達する動物型外殻生物の台頭まで惑星Ziの主として君臨することとなる。
 彼らは彼らにとって豊かだったこの時代に、多くの種に分かれ、可能な限り分化し、様々な種を残したのだ。


 
〈犠牲となるものと生き残るもの〉
〈5000万年前〉

■ 犠牲になるものと生き残るもの
地上を我が物とした巨大竜型(恐竜型)外殻生物のもつ、巨大で重く、そしてより硬い外皮という最大のその特徴が、次第に負い目となる時代がやって来た。
 惑星Ziに於ける環境が再び変化の兆しを見せ始めたのだ。ゾイド星系の中心にあるF級黄白色恒星の核融合リズムの数億年単位による変動サイクルが間氷期と重なった約5000~3000万年前に、Ziは全体が雪球(スノーボール)となる凍結期を体験した。通常、有効表面温度、6、580Kという恒星の熱放射が最大20%も低下し、そのためZiの地表は氷に閉ざされた。このことがZi地表からのアルベト(反射熱)の極端な増大を招き、わずか180年という、地質学上に於いては一瞬の間にZiは凍結した。このため、大半の巨大竜型(恐竜型)外殻生物たちは、この環境激変に対応できず絶滅の危機にさらされることになった。大半の水圏が凍結してしまっては、ゾイドコアは発生のプロセスを実践できない。かろうじて生き残った者たちも、急速に形質を変化させていった。
 この"寒い時代"に、勢力を伸ばし始めたのが小型動物たちであり、この時代を機に巨大生物の占めていた生態地位を次第に奪っていくのである。


 
〈動物型ゾイドの台頭〉
〈3000万年前〉

■ 恐竜型から動物型へ
 巨大竜型外殻生物時代、彼らの猛威におののき 岩に隠れ棲み、物陰に潜んでいた小さな外殻小動物群。巨大な彼らと比べて、弱く、小さく、力もなかったが、唯一勝る点があった。エネルギーの発生、消費効率が驚くほど良好なのであった。
 少なく食べ、素早く動く彼らは、"寒い時代"、岩窟や、わずかに残る温暖な地下洞窟などで子孫を増やし、やがて来る自分たちの時代に備えていた。
 彼らはかつて、自分たちの祖先が、『摂取した金属原素を体内で化学的に分解し、エネルギーを得る』というエネルギー発生法をみごとに受け継いでおり、これによって"寒い時代"を生き延び、後の繁栄を待つのであった。
 さらに両者の盛衰を決定的に分けたのが繁殖の際の溶媒、つまり水の必要性である。逆境を乗り切るための手段、ゾイドコアも万能ではなかったのだ。
 巨大竜型外殻生物は、ゾイドコアが幼体まで成長する環境に豊かな水源を必要としたため、氷河期の凍結した大地では、成長できずに死滅するしかなかった。動物型外殻生物は成長に必ずしも水を必要としなかったため、発展出来たのだ。
 大半の種が絶滅の危機に瀕した巨大竜型外殻生物であったが、動物型にとって思わぬ伏兵となる存在があった。彼らの一部は、微惑星落下以前に、地下熔岩溜まりの高圧、高温の地に生存の地を求め、かつて自分たちが発生した原始海中に近いこの環境下で、ひっそりと生き続けたのだ。
 しかし、彼らはあくまで特例で、地上を小動物群から取り戻すほどの勢力は持ち得ていない。
 こうして約3000万年前を境に、地上は、小動物群から派生した多種多様な動物型外殻生物の天下を迎えた。
 時が過ぎ、また温暖な気候になると更に動物種は栄え、クジラやゾウ等の大型種が再び現れるようになる。
 地球と異なった進化の過程を経た彼等のなかには、恐竜サイズまで巨大化した種もいたようである。


Cards: 001~010 | 011~018 | 019~028 | 029~035
Zoids Core Box | Return to the Vault